富士山のブナ林の特徴

Fagus crenata

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(Produced by)
静岡大学理学部生物学教室
(Faculty of science, Shizuoka University)
&
高山極域環境研究会(代表:増沢武弘)
(Society for the study of alpine and arctic environment)
バージョン 1.0
( ver. 1.0 )

 富士山の南面から東面にかけては、ブナの分布がみれれる。ブナが分布するのは標高800m〜1,700mで、ここは落葉広葉樹林帯である。富士山のブナ群落は大面積の純林ではなく、人工林や林道によって分けられ、小群落になっている。群落はブナだけではなく、ミズナラ、カエデ類との混交林となっている。ブナのほとんどは大径木であり老齢化している。胸高直径の頻度分布をみるとL字型を示さず、直径50p〜80pのところに小さな山がみられる状況である。今から200年〜300年前に成立した群落と推定されている。このような富士山のブナ群落は実生・稚樹が少なく、成木・老齢木が多いことから、個体群が拡大していくことはなく、衰退していくであろうと考えられている。
 現在のブナ林の外観は富士宮市から見た場合には春の淡い黄緑、夏の深い緑、秋の黄葉と景観が変化し、視覚的にも大変特徴的である。また、群落内部はハイキングコースが多数あり、多くの人の憩いの場所を提供している。

ブナ林に対するニホンジカの影響

 近年、富士山の亜高山帯では気候変動による影響の他にニホンジカの影響が大きく出始めている。ニホンジカは群で移動し、主に林緑や林内の草本植物を食べるが、食圧と移動の際の踏圧はブナ林や亜高山帯の森林そのものにストレスを与えている。特に冬季に樹木の樹皮を食べるため、通導組織が破壊さて立枯れになっている樹木が目立つ。山地帯ではブナ林だけではなくスギ、ヒノキの人工林も多大な被害を受けている。
 富士山については、麓から高山帯まで全体(垂直方向、水平方向)として、ニホンジカの影響を加味した保全管理を考えなければならない。


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