潜在自然植生防災林

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(Produced by)
高山極域環境研究会(代表:増沢武弘)
(Society for the study of alpine and arctic environment)
&
静岡大学理学部生物学教室
(Faculty of science, Shizuoka University)
バージョン1.0
(ver.1.0)
伊豆半島から

 日本の海岸は古くから「白砂青松」と表現されることからうかがえるように、ほとんどがクロマツ林となっている。東海地域では、千本松原、三保の松原、浜岡砂丘松原等が代表的である。これらの海岸林は防潮林、砂防林として海岸に植林された人工林である。東北太平洋岸においても、植林された砂防林のほとんどは針葉樹であるクロマツを主体としたものである。このクロマツ林は東日本大震災における津波により、壊滅的な被害を受けた。国立公園である陸前高田市の高田松原は7万本生育していたクロマツが、1本を残し、壊滅してしまった。しかし、このような状況の中で照葉樹林であるシカラシ・タブ・ヤブツバキが残存し、津波に抵抗性のある樹種として注目された。

 福島県と宮城県の海岸には津波によりクロマツの横たわっている姿が広がっていた。その中に緑の葉をしっかりつけた数本の木が目立った。ケヤキとエノキの落葉広葉樹である。この2種類は海岸のどこに行っても津波に耐えて、残っていた。
 これらの現実から、古くからの「海岸にはマツ」の固定観念を捨て、クロマツの防災林を潜在自然植生である照葉樹林や広葉樹へと転換することが考えられた。
 伊豆半島の海岸には多くの潜在自然植生(イヌマキ、ウバメガシ、ビャクシンなどの照葉樹)による、砂防林が存在する。この照葉樹とクロマツを混植するか、または、照葉樹林に転換するか、どちらかを各市町村に提案し、津波に対して強い抵抗能力をもつ新しいタイプの防災林を育成させることを提案したい。